投稿者Cさんの口コミと評判
人というのは写真で見た記憶を自分が体験した記憶のように感じることがあるといいます。私の場合それは子供の頃行った空港での写真でした。母親が一歳くらいの私を抱いてヘリコプターが停まっている南紀白浜空港での写真があるのですが、私はその記憶が何となくあるような気がしているのです。勿論それはきっと前述した、写真を見てから自分の体験したような気持ちになる錯覚だと思うのですが、一歳の私が口にくわえているライターの感触まで覚えているような気がしてならないのです。ヘリコプターを見た記憶は私の中には一切ないので、覚えていないと考えるのが当たり前ですが、その写真を見るたびに、懐かしいような不思議な感覚に陥ってしまう私なのです。それから数十年後の去年、私はその写真と同じ場所に立つ機会がありました。勿論周りの景色は写真とはかなり違っていて、同じ場所に立っても懐かしいなんて感情は出てきませんでしたが、なんだか少し不思議な感じがしました。30年ほど前に母親に抱かれてライターを加えていた私が、今度は一歳の娘を連れて同じ場所に立つと言うのはなんだかとても感慨深く、様々なことが頭を巡りました。私は和歌山県で生まれ育ちましたが、その空港に行ったのは人生で二回目です。近くを通ったこともありません。しかし30年前は抱かれていた私が今度はわが子を抱いて同じ場所に立っているという境遇に浸った私は、その場で今まで生きてきた30年間がフラッシュバックしたような不思議な気持ちになったのです。両親がしてくれたことや、家族で行った旅行、それに自分が結婚して子供を産み、自分の子供と一緒に旅行に行ったことや、夫婦でケンカをしたことなどが一瞬で思い出したように頭の中に次々と出てきて、なんだか涙が止まらなくなりました。記憶と言うのは不思議なもので、それまで忘れていたことなんかも何かの拍子にふと思い出すことがあります。ちょっとした一言やしぐさで一瞬で過去に戻ってしまうとき、なんだか私は涙が出てきてしまうのです。そんな思い出の空港に今度は孫を連れて行って見たいと思いました。